MUSIC 2025.07.06

Interview: KOTORI 音の表現の幅もバンドとしての在り方も広がったEP”TSUBASA”

EYESCREAM編集部
Photography_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima(DMRT)

KOTORIの音楽は実に情景的で、リスナーをどこか遠くへ運んでいく。横山優也(Vo、Gt)の歌に心を揺さぶられ、KOTORIのライブではフェスだろうとライブハウスだろうとフロア全体が歌っている。昨年に続き数々の大型フェスに出演し、着実に存在感を大きくしている3人組ロックバンドだ。
2024年5月にメジャー1stアルバム『KOTORI』を発表。バンドのスタイルを世に提示するも、7月にドラマーの細川千弘が脱退。以降、3人体制で活動を続け、ニューEP「TSUBASA」を完成させた。7月2日にリリースされるEPでは、これまでのKOTORIらしさに加え、新たなサウンド感を落とし込んだ楽曲を収録。本作とバンドの現状について3人をインタビュー。
 

自由に頭の中で鳴っている音を落とし込んでいった

 

ーニューEP「TSUBASA」はアルバム『KOTORI』リリース以来、約1年ぶりのリリースです。この1年、バンドにとってはどんな期間でしたか?

 
横山優也(以下、横山):「激動」のひと言でした。ようやく「KOTORIとは?」という作品が完成したところでドラマーが辞めることになったんですけど、決まっているツアーはやり切ろうってところから始まったので、どうやってやっていこうってことを考えられなかったですね。
 
上坂仁志(以下、上坂):たしかに。なんかあたふたしていたらもう1年経ったの? って感じです。
 
佐藤知己(以下、佐藤):何人ものドラマーに手伝ってもらって活動してきたので、1番助けられた年でもあると思いますね。
 

ーEP「TSUBASA」の楽曲制作期間は3人体制になってからでしたか?

 
上坂:「Ghost」の原型は昔からあったと思いますけど、曲として仕上げたのは3人体制になってからですね。
 
横山:だから、EPを出そうってことが決まってから作った曲が多いです。でも、録っていた時期はバラバラになるのかな。
 

ー各楽曲の歌詞を読んでいくと夏らしさが感じられる内容が多いです。7月リリースということもあるので、季節感も意識したのかと思ったんですが、いかがですか?

 
横山:そこまでは夏を深く意識したわけではなかったですね。自分の場合、曲を作る時点で風景を想像するんですよ。歌詞を書くときにテーマみたいなのが浮かんでくるんです。上坂が持ってきた「Ghost」を聴いたときは夏っぽさを感じたので、そういう内容に寄っていった感じです。
 

ーなるほど。曲作りの面ではいかがでしょう? アルバム『KOTORI』のときと変わった部分はありましたか?

 
横山:作り方自体はそこまで変わんないですね。
 
上坂:ただ、意識はちょっとずつ変化してきた気はします。
 
佐藤:うん、色々とこれまでに聴いたことがない音が今作の楽曲に入ってきたと思う。2人それぞれにね。
 
横山:そこは意図せずね。というのも、アルバム『KOTORI』を作っているときは、KOTORIとはこういうバンドなんだってことをわかってもらわなきゃいけないと考えながら制作していたんですけど、今回のEPは何もないフリーな状態だったので、わりと何も考えずに自分の頭の中で鳴っている音を曲に落とし込んでいくような作り方をしていたと思います。
 
上坂:それはそうだね。アルバムのときは枠組みの中にいれなくちゃっていう感覚があって、KOTORIらしさを表現しなくちゃいけないって感覚があったもんね。
 
横山:そう、それが今は曲に合っているならいいじゃんっていう判断になっていったかも。ちょっとやめておこうってのはなくて、やろうと思ったことを自由に表現した感じというか。
 

ー3人で制作することで、アルバム制作時と違う部分はありましたか?

 
上坂:最初はどうなることやらって思っていたんですけど、意外とどうにかなったというか。なんとか3人でもできますねってことがわかった作品になったかなと思います。いい曲もいっぱいできたし。大丈夫っしょ、的な。
 
佐藤:レコーディングへの流れも変わらないですし、いろんなドラマーと一緒にできたことも楽しかったですね。ただ、今思えばですけど、「Ghost」や「魔法」といった曲はかなりギターで埋め尽くされている感じがあって、ここまで弾ききる曲もなかったように思うんですよね。もしかしたら2人がやりたかったのは意外とそういう音像で、それが素直に表現できるようになったのかなって、自分は感じました。
 

ひと回り大きくなったバンドのことを示したタイトル「TSUBASA」

 

ー6曲目の「SKY」は軽快かつ壮大な印象があったんですが、何かライブでの光景を意識したりしたのかな? と。いかがでしょう。

 
横山:たしかに曲作りにおいて、基本的にはそういう考えもあるんですけど、そこまで具体的な風景を思い描いていたということはなくて、何か大きいステージで鳴っている曲ってぐらいの感じだったかもしれないです。「SKY」は四つ打ちですけど、今までに「We Are The Future」とかでやったくらいで、あまり僕らがやってこなかったダンス調の曲なんですよね。それで、もっとキラキラした音を入れて派手に表現してみようと思って考えうる音を全部入れていったんです。
 

ーたしかに冒頭からのシンセっぽい音が特徴的です。メロディからも未来を感じさせる印象がありました。

 
横山:希望はないとイヤだなと思って。前向きな曲にしたかったんですよ。『KOTORI』を出して、そこから助走をつけて飛び立っていくような曲を作りたくて。BUMP OF CHICKENの「ロストマン」という曲が好きなんですけど、そこからインスパイアを受けて、今の自分たちなりに明るく表現した曲を作ろうとしたのがスタートにあって、自分の現在地を示すような内容を前向きに歌いたいと思ったんです。
 

ー上坂さんが作った楽曲で、これまでと違うサウンドを入れたものはありますか?

 
上坂:3曲目の「seed」は今までにないトラップっぽいビート感とハイハットの音を入れてみました。そこから曲の後半になっていくとロックな感じに変化していくように切り替えて録り方も変えたんです。
 
佐藤:ベースもアンプのセッティングを変えたりしたんですけど、ここまで前半と後半でズバッと変わる曲はなかったと思いますね。
 
上坂:実際にガラッと雰囲気を変えたいという意図があって、それを表現できたと思います。
 

ー「SKY」や「seed」のように、これまでと違う曲を作ったというのは、今のバンドがそういうムードだからですか?

 
横山:自然と出てきたという感じです。逆に前回のアルバムだったら必要なパーツがわかっていたり、ある程度作品の流れがあったので、どういう曲を作ればいいかがわかったのでやりやすい部分もあったんですけど、今回のEPは逆に何を作ったらいいかわからなくなっちゃって。そういうのも理由としてあると思います。だから、どの曲もけっこうギリギリだったもんね。「ハッピーエンド」とか。


 
上坂:いや、「Bluemoment」もかなりギリギリだったんじゃないか? レコーディング直前に送ってきたと思う。
 
横山:宮崎(地元)に帰る前にね。だから宮崎感がすごく出てるんだよ、この曲。歌詞にある<あの青いバスに乗って>って宮崎交通のバスの色ですからね。ちなみにジャケのアートワークに登場する飛行機の配色もその色です。ずっとKOTORIのデザインを手伝ってくれている高校の頃の同級生、Kumpei(デザイナーのKumpei Nakatakeさん)が、この曲を聴いて『あのバスのことや』って。それで、飛行機の配色を揃えてくれたんです。
 

ーなるほど、宮崎のバスがカラーリングの由来なんですね。ちょっと話が逸れた質問をします。楽曲制作に対して、音楽以外からインスピレーションを与えられるものはありますか? 例えば、映画やアニメなど。

 
上坂:それこそ「魔法」の曲を広げていくときは『まどマギ』(アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』)を意識していました。けっこうぶっ飛んだ描写が多いアニメなので、その辺りを曲に取り入れて、2番目のサビが終わった後のギターソロで変な音を入れたりってことをしました。
 
横山:そこでいくと、僕もアニメからのインスピレーションはありますね。『天元突破グレンラガン』が僕のバイブルなんですよ。
 

ーそうでしたか!

 
横山:僕は言葉では説明できないけど、なぜかぐっとくる、みたいなことが自分のやりたい音楽だと思っていて。グレンラガンって、よくわかんないけどやってみようって合体して最強になっていくわけじゃないですか。あれ、めっちゃ大事な気持ちだなと思っていて。カミナの言葉もめっちゃ響くので。あの作品は僕のバンド道と通ずるものがかなりありますね。
 
上坂:それをよく言っていたので、僕も1話を観てみたら、作中の台詞が歌詞になっていました。なんか聞いたことあるな……って。
 
一同:笑。
 
横山:「お前を信じる俺を信じろ」でしょ。
 
上坂:そうそう(笑)。
 
横山:この台詞、やば! と思って。お客さんに言わなきゃいけないと思って歌詞に引用(※)しているんですけど、あれが僕らしさというか。それをグレンラガンで見つけさせてもらいました。

※「Dive into your Dreams」の一節にインスパイアされた歌詞がある。

 

ーでは、EP「TSUBASA」というタイトルにはどんな意味があるのでしょう?

 
横山:千弘(KOTORIの元ドラマー細川千弘さん)が入ったときに初めて作った作品が「HANE」っていうシングルなんです。調べると、生物学的に羽根は比較的小さな鳥類の羽のことを指していて、翼は大きな鳥類の羽を指す場合があるそうなんです。この5年でKOTORIはいろんな人に助けてもらって、どんどんバンドとして大きくなっていったので、ひと区切りのタイミングで「HANE」から「TSUBASA」へ、という意味合いを込めて名付けました。
 

ー今作を携えて8月からは『GIVE YOU TSUBASA』ツアーが開催されます。ワンマンツアーですが何か考えていることはありますか?

 
横山:まずシーケンスをライブで使うのが初ですからね。そこが楽しみです。EP「TSUBASA」の曲はホールにも似合うような曲だと思うんですが、そのデカい感じをライブハウスの中で表現できたらいいなと考えています。音で壮大さを感じて狭い場所でも広く感じるような。そんな音の説得力を持ってライブを展開していきたいです。
 

INFORMATION

KOTORI New EP「TSUBASA」

2025年7月2日 (水) リリース
2,200円(税込)/ PCCA-06396
https://lnk.to/KOTORI__TSUBASA_digital

KOTORI pre.”GIVE YOU TSUBASA” TOUR
08月08日(金)埼玉・越谷EASYGOINGS (SOLDOUT)
08月20日(水)愛知・名古屋CLUB QUATTRO (SOLDOUT)
08月22日(金)福岡・BEAT STATION
08月27日(水)大阪・梅田CLUB QUATTRO
08月31日(日)香川・高松DIME
09月01日(月)広島・SECOND CRUTCH
09月07日(日)宮城・仙台MACANA (SOLDOUT)
09月08日(月)新潟・CLUB RIVERST (SOLDOUT)
09月13日(土)北海道・BESSIE HALL (SOLDOUT)
09月22日(月)東京・キネマ倶楽部 (SOLDOUT)

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